腕時計は経費にできる?高級時計が認められる条件・勘定科目・減価償却を解説

「仕事で身につける腕時計を経費にできないか」
このように考えたことのある、経営者や個人事業主の方もおられます。
実は腕時計は、税務上経費性を問われやすい支出のひとつです。
本記事では、経費として判断される場合の基準から、勘定科目と仕訳、単価が高い高級腕時計ならではの注意点、税務調査への備えまで整理します。
目次
腕時計は経費にできる?判断基準と認められるケース
結論からお伝えすると、腕時計は経費として認められづらい支出です。
ただし、事業の内容と購入目的によって判断は分かれます。
腕時計は原則として経費にしにくい
腕時計は時刻を確認する道具でありながら装飾品としての側面もあり、仕事と私生活のどちらでも使えるツールです。
このため次のような理由だけでは、事業としての直接的な関連性を説明しきれません。
- 仕事中に着用するから
- 営業活動で時間管理上必要だから
- 取引先の印象がよくなるから
必要性を説明できない支出は、償却資産として分類されない10万円未満であっても経費にはなりません。
経費になるかは事業との関連性で判断する
経費になり得るか判断の軸は、売上を得るために必要な支出か、また業務内容が購入目的と結びついているか、といった点です。
具体的には、以下のような要素から総合的に判断されます。
- 使用者:誰が使っているのか
- 使用場所:事業所か、自宅や外出先か
- 使用目的:どの業務のために使うのか
- 保管方法:会社が管理しているか
- 私用の有無:休日も使っているか
判断の際に誤解されやすい点は、支払方法です。
法人名義や事業用カードで決済したという事実は、経費性を証明するものではありません。
▶関連コラム:企業の経費削減はどこから始める?失敗しない進め方の手順と、プロが教える「削ってはいけない経費」を解説
経費にできる可能性が高いケース
一方で、腕時計そのものが売上に直接関係している場合は、経費として認められる可能性が高まります。
- 時計販売店や買取店が、販売や査定のために購入する
- 時計修理業者が、修理の技術研究のために購入する
- 動画配信者やライターが、レビューの対象として購入する
- 俳優やモデルが、衣装や小道具として使用する
共通する点は、腕時計がなければ売上が発生していない、という関係を説明できることです。
経費にできない可能性が高いケース
反対に、次のようなケースでは経費として認められない可能性が高くなります。
- 社長や営業担当者が、身だしなみやステータスのために購入する
- 商談では着用するものの、休日や旅行でも日常的に使っている
- 取引先との会話のきっかけになる、という抽象的な理由しかない
- 事業の規模や内容に対して著しく高額で、合理性を説明できない
特に多いケースは2つ目で、日常的に身につけていれば私物と判断されやすくなります。
事業用と私用を家事按分できるか
個人事業主の場合、事業と私生活の両方に関わる支出は、合理的かつ明確に区分できる部分に限って必要経費にできます。
自宅兼事務所の家賃を床面積で按分する方法(家事按分)が代表的です。
ただし、腕時計は家事按分が認められにくい支出です。
着用時間を客観的に記録する手段がなく、走行距離やデータ通信のような数値基準を持ちません。
「業務専用として使い切る」このように考える方が合理的です。

橋場先生
腕時計に限らず、スーツや靴など、一見して「仕事のためのもの」は多くあります。
しかし、実は明確に経費として認められるものは多くはありません。
一方で、経費に算入できるもの、できないものは判断しづらく、税務調査が入った際にはじめて「NG」とされることもあります。
こうした事態を避けるためには、税務の専門家のサポートが必要です。
「否認されない程度に、最大限経費を活用したい」このようにお考えの方は、ARK税理士法人へお気軽にご相談ください。
法人・個人事業主・サラリーマンで異なる腕時計の扱い
同じ腕時計でも、購入する主体によって税務上の扱いは変わります。
立場ごとに、どの点が問われているのかを整理します。
【個人事業主が腕時計を購入した場合】
- 事業収入を得るために直接必要な支出であることが求められる
- 領収書に加え、掲載した記事や動画、企画書など、対象となる時計で行ったことが分かる資料も残す
【法人や社長、役員が腕時計を購入した場合】
- 法人名義で購入しても、事業上必要でなければ損金として認められない可能性がある
- 実質的に役員個人が使用していると判断された場合、役員給与・賞与として扱われる
- 役員賞与と認定されると、法人側で損金に算入できず、役員個人にも所得税が課される
【従業員へ腕時計を支給した場合】
- 特定の従業員だけに腕時計を支給する場合、現物給与として扱われ、対象の従業員に所得税・住民税が課される可能性がある
- 永年勤続表彰や創業記念品である場合、支給条件や金額によって課税関係が変わる
- 福利厚生費とするためには、全従業員を対象とした公平な基準が前提となる
(参考)国税庁 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
【サラリーマンが仕事用の腕時計を購入した場合】
- 給与所得者は、仕事で利用する支出を個別に必要経費として計上できない(給与所得控除の形式であらかじめ一定額が差し引かれるため)
- 例外として特定支出控除があるが、対象となる支出の範囲が定められ、勤務先の証明も必要になる
- 特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える部分が対象のため、腕時計の購入費が該当することは考えにくい
【Apple Watchやスマートウォッチの場合】
「スマートウォッチなら経費にしやすい」とする意見もありますが、そうとは限りません。
通知の受信やスケジュール管理といった使い方は、私生活でも同じようにできるからです。
経費として認められる可能性があるのは、以下のように用途が業務に限定される場合に限られます。
- 自社で開発したアプリの動作検証に使用する
- スポーツ指導者が、利用者の運動データ計測に使用する
- 従業員の安全管理のため、心拍や位置情報の把握に使用する
- 商品レビューの対象として購入する
なお、セルラーモデル(スマートフォンと同様に通信機能が付属しているタイプ)の通信量や業務用アプリの利用料は、腕時計本体とは切り分けて判断します。
腕時計を経費にするときの勘定科目と金額別の会計処理
腕時計を経費として計上する場合、事業との関連性が認められることを前提に、取得価額ごとに異なる処理をします。
10万円未満は消耗品費
取得価額が10万円未満であれば、購入した年に全額を経費にできます。
勘定科目は消耗品費が一般的で、年間の上限額もありません。
たとえば、8万円の腕時計を現金で購入した場合の仕訳は以下のとおりです。
- 借方:消耗品費 80,000円
- 貸方:現金 80,000円
税抜き処理の場合は税抜きの金額で判定するため、税込で10万円をわずかに超えても、10万円未満となることがあります。
(参考)国税庁 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
10万円以上20万円未満は一括償却資産を選べる
取得価額が10万円以上になると、原則として、工具・器具・備品といった固定資産に計上して減価償却します。
ただし、20万円未満であれば、3年間で均等に経費化する「一括償却資産」としての扱いも選べます。
たとえば、15万円の腕時計を購入した場合の仕訳の例は以下のとおりです。
- 購入時|借方:一括償却資産 150,000円/貸方:現金 150,000円
- 1年目|借方:減価償却費 50,000円/貸方:一括償却資産 50,000円
- 2年目・3年目も同様に、各50,000円を経費へ振り替える
一括償却資産は月割計算せず年数で按分するため、期末近くの取得では有利に働くことがあります。
20万円以上40万円未満は少額減価償却資産の特例を検討
青色申告を行う一定の中小企業者や個人事業主であれば、少額減価償却資産の特例を利用できる可能性があります(中小企業の場合、常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象から除く)。
なお、取得の時期によって、金額の基準が変わる点に注意が必要です。
- 令和8年3月31日までに取得:10万円以上30万円未満が対象
- 令和8年4月1日以降に取得:10万円以上40万円未満が対象
いずれも年間の取得価額の合計300万円までが限度で、この特例の適用期限は令和11年3月31日までです。
たとえば、25万円の腕時計に適用する場合は、購入時に全額を経費として処理します。
- 借方:消耗品費(または減価償却費)250,000円
- 貸方:現金 250,000円
40万円以上の高級腕時計は固定資産として減価償却
特例の対象にならない金額であれば、購入した年に全額を経費に計上できません。
工具・器具・備品などの資産に計上し、法定耐用年数に従い経費化します。
たとえば、100万円の腕時計を経費に算入する場合は以下のとおりです。
- 購入時|借方:工具器具備品 1,000,000円/貸方:現金 1,000,000円
- 決算時|借方:減価償却費 ◯◯円/貸方:工具器具備品 ◯◯円
期の途中で取得した場合は、使用を開始した月から決算までの月数で月割計算します。
高額な時計ほど、購入した年の節税効果が限定的になる点に注意しましょう。
腕時計の耐用年数は10年
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によると、「器具及び備品」のうち「時計、試験機器及び測定機器」に時計が含まれ、その耐用年数は10年と定められています。
ただし資産区分は用途によって変わり、販売のために仕入れた時計は固定資産ではない点に注意しましょう。
また、中古品の場合は、中古資産の耐用年数を見積もる方法を利用できる可能性があります。
販売目的や撮影目的の場合の勘定科目
販売のために購入した腕時計は、消耗品費や工具・器具・備品ではなく、売却するための在庫として、商品や仕入高として処理します。
期末に売れ残った分は棚卸資産に計上し、撮影や貸し出しで利用する時計は、使用期間と取得価額に応じて、固定資産になる可能性もあります。
ロレックスなどの高級腕時計を経費にする際の注意点
高級腕時計は資産価値が下がりにくいことから、税務上も独特の論点が生じます。
高級腕時計だから経費にできないわけではない
「価格やブランドだけを理由に、経費にできない」とは限りません。
- 時計・古物売買業としての「商品(棚卸資産)」
- 撮影・舞台・YouTubeなどの「衣装・小道具」
- 時計レンタル事業・撮影スタジオの「貸出用資産」 など
こうした事業者にとっては業務上必要な支出となります。
一方で、金額が大きいほど、購入の合理性や私用の有無を確認されやすくなります。
ステータスや信用力を理由にするのは難しい
一方で、以下のような理由は説明として弱く、経費性の根拠になりにくいといえます。
- 商談相手からの信用を得るため
- 経営者として見栄えがよくなるから
- 身につけることで話題作りになるから
スーツや宝飾品などと同様に、個人的な身だしなみの範囲と判断されやすい支出です。
資産価値が上がる時計でも減価償却は必要
中古市場で値上がりする時計であっても、事業用の固定資産として利用する場合は会計上の減価償却を行います。
市場価格の上昇と帳簿価額の減少は、別途考える必要があるからです。
なお、影響は売却の段階で現れ、帳簿価額が下がる一方で市場価格が上がっていれば、差額は売却益として認識されます。
中古腕時計を購入した場合
中古品でも、事業用の資産であれば固定資産へ計上し減価償却が必要となります。
ただし、経過年数に応じて、中古資産の耐用年数を見積もる方法を利用できる場合があります。
なお、取得価額には、事業で使用するために直接かかった費用(配送料・仲介手数料・関税・オーバーホール費用・鑑定費用など)を含めなければいけません。
経費にした腕時計を売却・譲渡した場合
固定資産として計上していた腕時計を売却した場合、売却額と帳簿価額の差額を、固定資産売却益、または売却損として計上します。
商品として保有していた場合は、売上と売上原価で処理します。
注意が必要なケースは役員や従業員へ譲渡する場合です。
時価より著しく低い価格で譲渡すると、差額が給与・賞与として課税される可能性があります。
▶関連コラム:【節税対策に福利厚生】確認したい10の制度│利用時の注意点もご紹介
税務調査で腕時計の経費計上を否認されないための対策
税務調査での指摘を避けるためには、経費として計上した根拠を説明しなければいけません。
日頃から備えておきたい、記録と管理の方法をお伝えします。
▶関連コラム:【税務調査の完全ガイド】対象になりやすい条件・流れ・よく聞かれる質問・対策を税理士が解説
領収書・レシート・支払記録を保存する
以下のとおり、支払い記録を保存することは大前提です。
- 購入日
- 商品名
- 金額
- 販売店
- 支払者が分かる資料 など
クレジットカードの明細だけでは、何を購入したのか示せない場合もあります。
中古品を個人から購入した場合は、売買契約書や受領書といった資料を作成します。
購入目的と業務内容を記録する
領収書が示すのはあくまで購入の事実で、業務に使われたことまでは証明できません。
以下のとおり、誰が、どの業務でどのように使用したのかを記録します。
- 社内稟議書や購入申請書
- 撮影の企画書、台本、香盤表
- 掲載したレビュー記事や動画のURL
- SNSへの投稿履歴
- 貸出記録や使用記録 など
私用を防ぐ管理体制を整える
法人所有の場合は以下のとおり、私用と混ざらない体制を整えます。
- 会社内で保管する
- 使用者を限定する
- 持ち出しの記録を作成する など
修理代・電池交換代・通信費の扱いも整理する
経費として認められる事業用の腕時計については、以下の項目が修繕費や消耗品費、その他経費として認められる場合があります。
- 通常の修理代
- 電池交換の費用
- 通信費(セルラーモデルの場合)
ただし、資産価値を高める大規模な改修は、資本的支出として資産に計上されるケースもあります。
高額な腕時計は購入前に税理士へ相談する
購入したあとで勘定科についてのみご相談されるケースは多くあります。
しかし、その段階では選べる処理方法が限られる点に注意が必要です。
万が一否認された場合、生じるのは追徴課税だけでなく、役員給与として認定されれば役員個人の所得税や住民税の負担も発生します。

橋場先生
事業として腕時計を購入する場合、単価が高く、また本数も多くなりがちです。
この場合、税務処理の方法を間違えてしまうと、多額の税金を支払わなければいけないケースもあります。
大切なことは、購入する前に、売却も含めた出口戦略、および税金の支払いまで含めた購入計画を立てることです。
税制面での最適化は、経費についての制度を熟知したARK税理士法人へご相談ください。
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まとめ|腕時計の経費計上は事業との関連性で決まる
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「腕時計を経費に計上できるか」
この問いへの答えは、事業との関連性がどの程度あるのかによって変わります。
このため、容易に「できる」とは言えない点が難しいところです。
また、金額によって消耗品・一括償却資産・少額減価償却資産・固定資産など、経費処理の方法が異なる点にも注意が必要です。
購入する方法によって、実際に支払う税金が大きく変わるケースもありますので、事前に専門家に相談することをおすすめします。
ARK税理士法人では、経費性の判断から日々の記帳方法、税務調査への備えまで一貫してご支援していますので、腕時計に限らず税金のお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
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