インフルエンサー・YouTuberの経費、按分の実務目安はどれくらい?衣装代・美容費・旅行費を税理士が解説

インフルエンサー・YouTuberの経費について、「衣装代はどこまで落とせるのか」「美容費は経費になるのか」と疑問をお持ちの配信者・クリエイターの方は多くいらっしゃいます。
結論からお伝えすると、経費として認められるかどうかは「事業との関連性を説明できるかどうか」で判断されます。動画に映っているかどうかだけでなく、按分(プライベート利用分を除いた割合で計上すること)の考え方を理解しているかが重要です。
本記事では、衣装代・美容費・ブランド品・旅行費について、実務でよく使われる按分の目安から、税務調査に備えた記録の残し方までを税理士が解説します。
ご自身の支出が「どこまで経費にできるのか」判断できるようになりますので、安心して発信活動に集中できるようになります。
目次
インフルエンサーの経費、なぜ「グレー」と言われるのか
(オレンジ文字推奨)経費として認められるかどうかの最大のポイントは、「事業との直接的な関連性を説明できるか」です。
会社員や一般的な個人事業主と違い、インフルエンサーの支出は「衣装」「美容」「旅行」など、一見プライベートの支出に見えるものが仕事に直結しているケースが多くあります。国税庁の基本通達でも、家事関連費は「取引の実態に即し必要経費に算入される部分を明らかにし得る場合」に経費として認められるとされており(参考)国税庁 家事関連費〔第1号関係〕、この「明らかにし得るか」が実務上の分かれ目になります。
- 経費になりやすいケース:完全に仕事用(プライベートで使わない衣装、撮影専用の小道具など)
- 按分が必要なケース:プライベートでも使えるもの(普段使いできる服、生活の一部でもある美容など)
以下、品目別に実務上の按分の目安を紹介します。
▶関連コラム:YouTuberの経費はどこまでいいの?経費になるもの、ならないものを税理士が解説(
品目別・経費計上の按分目安【衣装代・美容費・ブランド品・旅行費】
衣装代
配信や動画撮影で着用する衣装は、完全にプライベートで着ないものであれば全額経費にできる可能性があります。一方、普段着としても使える服の場合は、按分が必要です。
実務上の目安としては、映像に映っている実績や着用頻度を根拠に、プライベート利用分として一定割合を除外した上で経費計上するケースが多く見られます。
美容費(美容室・エステ・コスメ)
美容費は最も判断が分かれやすい項目です。容姿が収益に直結するインフルエンサーという職業の特性上、経費性を主張しやすい一方、美容そのものは私生活とも切り離せないため、按分の考え方が特に重要になります。
実務では、美容活動としての実態(撮影前の準備であること、投稿内容との関連性など)を踏まえて、按分の目安が使われることが多いです。「美容代は全額経費」という主張は税務調査で否認されるリスクが高いため注意が必要です。
ブランド品・小道具
撮影用に購入するブランド品やアクセサリーは、購入価格が30万円を境に取り扱いが変わる点を押さえておくと判断がしやすくなります。30万円以上のものは資産として計上し、複数年にわたって費用化(減価償却)するのが原則です。30万円未満で、かつ撮影専用であることが説明できるものは、購入した年に全額を経費にできる場合があります。
なお、青色申告者には「少額減価償却資産の特例」もあり、一定の要件を満たせば30万円未満の資産を一括で経費にできます。
旅行費用
「ロケ地への旅行」や「撮影を兼ねた旅行」は、経費と認められるかどうかで最もトラブルになりやすい項目の一つです。動画・投稿としての成果物があることを前提に、旅行費用の一定割合をプライベート利用分として除外した上で計上する目安が使われます。成果物が存在しない、あるいは仕事との関連性を客観的に説明できない旅行は、経費として認められない可能性が高いため注意してください。

橋場先生
「按分の割合は、正直ケースバイケースです。ただ、”なぜその割合にしたか”を説明できないと、税務調査で一番揉めるポイントになります。数字だけを覚えるのではなく、考え方を理解しておいてください。」
按分の「根拠」をどう残しておくか
按分割合そのものより重要なのが、「なぜその割合にしたのか」を説明できる記録を残しておくことです。税務調査では、経費の金額だけでなく、その計上根拠が必ず確認されます。
具体的には、以下のような記録を残しておくことをおすすめします。
- 該当の衣装・小道具が映っている動画や投稿のスクリーンショット、公開日
- 撮影台本や企画書(旅行がロケであったことを示す資料)
- 投稿本数や再生数など、収益への貢献を示す指標
- 按分の考え方をまとめたメモ(毎年同じ基準で判断できるようにしておく)
こうした記録は、確定申告のためだけでなく、万が一の税務調査の際にも「きちんと事業として整理された経費である」ことを示す材料になります。個人で事業を行っている方の帳簿・書類の保存義務についても、国税庁が保存期間の目安を公表しています(参考)国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について。
ARK税理士法人では、税務調査を想定した「模擬税務調査」を実施し、経費計上の根拠が説明できる状態かどうかを事前に確認するサポートも行っています。
認められにくい経費の注意ポイント
一方で、以下のような支出は経費として認められにくい傾向があります。
- 動画・投稿に一切登場しない、私生活のみで使用するもの
- 家族や友人との私的な旅行・食事で、仕事との関連性を説明できないもの
- 領収書はあるが、何のために使ったか本人も説明できないもの
「動画に映っているから」だけを理由に何でも経費にしてしまうと、税務調査で否認され、追徴課税につながるリスクがあります。判断に迷う支出があれば、その都度記録を残しつつ、確定申告の前に税理士に相談する習慣をつけることをおすすめします。

橋場先生
「模擬税務調査をしていると、経費の金額そのものより”説明できるかどうか”で明暗が分かれるケースをよく見ます。記録は面倒でも、後から自分を守る一番の武器になります。」
よくある質問(FAQ)
Q. 副業でインフルエンサー活動をしていますが、確定申告は必要ですか?
給与所得者の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります(参考)国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人。20万円以下でも住民税の申告は別途必要になる点に注意してください。専業の場合は所得48万円が申告の目安です。
Q. 税務調査が来たらどうなりますか?
経費の按分根拠を説明できる記録が整っていれば、過度に心配する必要はありません。逆に記録が曖昧なまま高額な経費を計上していると、否認・追徴のリスクが高まります。
Q. 法人化したほうがいいですか?
収益規模や経費構成によって最適なタイミングは異なります。一般的には所得が一定水準を超えると法人化による節税メリットが出やすくなりますが、社会保険料の負担など考慮すべき点も多いため、個別のシミュレーションをおすすめします。
まとめ
インフルエンサー・YouTuberの経費計上は、「事業との関連性を説明できるか」が最大のポイントです。まずは次の3つから始めてみてください。
直近の支出のうち、衣装・美容・旅行に関するものをリストアップする
それぞれについて、動画や投稿と紐づく記録(スクリーンショット・台本など)を残す
按分の考え方に迷うものは、確定申告の前に一度税理士に相談する
(オレンジ文字推奨)自己流の判断で経費を計上し続けると、後から大きな追徴課税につながるケースも少なくありません。早い段階で一度、専門家に按分の考え方を確認しておくことをおすすめします。
ARK税理士法人では、インフルエンサー・クリエイターの方の確定申告から按分の考え方まで一貫してサポートしています。経費計上に少しでも不安がある方は、お気軽にご相談ください。
出典
- 国税庁「〔家事関連費(第1号関係)〕」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」





