法人税還付金の仕訳はどう書く?未収法人税等の処理と税務調査への備えをプロが伝授

「法人税の還付金を受け取れることになったが、どのタイミングで、どんな仕訳を書けばいいのかわからない」
こうしたお悩みを抱える経営者や経理担当者の方も多くいらっしゃいます。
法人税の還付金は正しく請求することで確実に手元に現金が戻ってくる、キャッシュフロー改善に有効な手段です。
特に業績が悪化した期や中間納付額が確定税額を上回った期には、その金額は数百万円単位になることもあります。
しかし実務においては、「決算時(申告時)」と「実際に口座に入金された時」の2つのシーンでそれぞれ正しい仕訳を行う必要があり、手続きごとに処理方法が異なるため迷ってしまいがちです。
また、「還付を求めると税務調査に入られやすくなるのでは?」という不安から、申請をためらうケースも少なくありません。
そこで本記事では、法人税の還付が発生する主な3つのケースや欠損金の繰戻し還付の計算方法、経理担当者が迷いがちな仕訳例に加え、税務調査への備えについても解説します。
目次
法人税の還付金が発生する3つの主な理由
支払った法人税の一部が戻ってくる還付制度は特別な制度ではなく、一定の条件を満たした法人であれば誰もが利用できる権利です。
では、具体的にどのような状況で受け取れるのか、代表的なケースをご紹介します。
中間申告による納付額が確定税額を上回った場合
事業年度の途中で法人税の一部を前払いする中間申告(中間納付)は、前期の法人税額を元に算出した「予定納税額」を先払いするものです。
しかし、当期の業績が想定よりも悪化している場合、決算で確定した税額が中間納付額を下回ることがあり、その差額が還付されることとなります。
たとえば、前期の法人税を基準に200万円を中間納付したが、当期の確定税額が120万円だった場合、80万円が還付される計算です。
欠損金の繰戻しによる還付(赤字が出た場合)
当期に赤字(欠損金)が生じた場合、前期に納めた法人税の一部について還付を受けられます。
これを「欠損金の繰戻し還付」といいます。
過誤納金(計算ミス等)や災害による損失
以下のとおり税務処理上のミスや災害による損失も、法人税を還付する理由になり得ます。
- 過誤納金の還付:申告や納付の際に計算を誤り、本来より多く納税した場合
- 災害損失による法人税の還付:災害によって棚卸資産や固定資産に損失が生じた場合
【重要】欠損金の繰戻し還付の適用条件と計算方法
各種還付制度の中でも利用する割合の多い「欠損金の繰戻し還付」は、使い方次第で手元に多額のキャッシュを確保できる制度です。
ただし、適用条件や計算方法を正確に理解していないと、申請自体ができなかったり、計算が誤ったりするリスクもあります。
還付を受けられる中小企業の範囲
まず、還付を受けられる会社は中小企業に限られ、具体的には資本金1億円以下の中小法人が対象となります。
現行制度では大法人(資本金1億円超)は原則として適用されません。
その他にも条件がありますので、以下の項目を確認しましょう。
- 資本金または出資金が1億円以下の普通法人
- 公益法人等・協同組合等も対象
- 青色申告書を提出している法人であること
- 欠損事業年度と前事業年度の両方で青色申告を行っていること
還付金額の計算例(実例で解説)
では、実際に還付を受ける場合、どういった計算方法で算出するのでしょうか。
条件を設定した上で、計算例をご紹介します。
【法人税還付金額の算定例】
還付金額 = 前期の法人税額 ×(当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額)
- 前期の所得金額:2,000万円
- 前期の法人税額:300万円
- 当期の欠損金額:800万円
算定式に当てはめると、300万円 ×(800万円 / 2,000万円)= 120万円 が還付金額です。
なお、当期の欠損金額が前期の所得金額を上回る場合は、前期の所得金額を上限として計算します。
繰戻し還付と「繰越控除」のどちらを選ぶべきか?
欠損金を扱う場合、繰戻し還付を利用することのほか、今期の赤字(欠損金)を将来(翌期以降)の黒字と相殺できる「繰越控除」を利用することも可能です。
繰戻し還付と繰越控除には次のような特徴がありますので、場面に応じて使い分けましょう。
【繰り戻し還付の特徴】
- 申請後速やかに現金が戻る(キャッシュフロー改善)
- 将来の欠損金繰越額が減少する
【繰越控除の特徴】
- 今後10年間の所得と相殺できる
- 今すぐ現金に戻る訳ではない
- 将来黒字にならなければ効果がなくなる

橋場先生
法人税の還付についてお悩みの方は、「ARK税理士法人」までお気軽にご相談ください。
会社の状況によって変わる方針を明確に定め、目的設定に応じた最適な手続きを専門家がサポート・代行いたします。
経理担当者必見!還付金の勘定科目と仕訳例
還付金の仕訳処理は、還付が確定した決算時と、実際に入金されたタイミングでそれぞれ正確に実施する必要があります。
特に「未収法人税等」の計上を忘れると決算書の数字が実態とずれてしまいますので、入念な確認が必要です。
還付決定時(決算時)の仕訳|「未収法人税等」の計上
確定申告の際に還付されること(還付額)が確定したら、現金の移動はないものの、その権利(債権)を帳簿に載せる必要があります。
たとえば120万円の還付が確定した場合、以下のとおり仕訳をすることで、決算書上に「この金額だけ還付を受ける権利がある」ことが反映されます。
- (借方)未収法人税等 1,200,000円
- (貸方)法人税等 1,200,000円
還付金受取時の仕訳と「還付加算金」の扱い
続いて税務署から実際に入金があった場合には、「未収法人税等」を消し込み、受け取った還付金を普通預金に計上します。
このとき、還付金に加えて「還付加算金」が上乗せされる場合があります。
還付加算金とは、還付が遅れた期間に対して税務署が支払う利息の一種で、「雑収入」として処理します。
法人税の還付金とは異なり、課税対象となる点にも注意が必要です。
たとえば120万円の還付金に加えて、還付加算金3,000円を受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。
- (借方)普通預金 1,203,000円
- (貸方)未収法人税等 1,200,000円
- (貸方)雑収入 3,000円
法人税と消費税の還付が同時に発生した場合の注意点
法人税そのものは消費税の対象外ですが、実務上、法人税の還付と同時に「消費税の還付」が発生するケースもあります。
この場合、消費税の処理方式(税込方式か税抜方式か)によって使用する勘定科目が変わるため、両者を混同しないよう注意が必要です。
- 税込方式:消費税関連の還付を「租税公課」や「雑収入」などで処理
- 税抜方式:消費税を「仮払消費税等」「未収消費税等」などで別管理
自社がどちらの方式を採用しているのか経理部門で確認した上で、仕訳の方法を統一することが重要です。
還付請求の手続きと提出期限の管理
法人税の還付請求をするに当たって、手続きの方法や提出期限を確認することも重要です。
必要書類(法人税申告書・還付請求書)の作成
還付請求を行う場合、税務署が指定する様式を利用すること、また正確に必要事項を記入することが重要です。
具体的に、還付金を請求するためには以下の書類を提出する必要があります。
- 欠損金の繰戻しによる還付請求書(所定の様式)
- 法人税申告書(別表一・別表七など)
- 前期・当期の決算書類(貸借対照表・損益計算書)
- 中間納付に関する書類(中間申告還付の場合)
請求期限は「申告書の提出期限」まで
法人税の還付に関して注意が必要な点は、期限を過ぎた場合に還付を受ける(または請求する)権利を失うことです。
繰戻し還付の請求は、欠損金が発生した事業年度の確定申告書と同時、または申告書の提出期限(原則として決算日から2か月以内)までに提出しなければいけません。
還付を適切に受けるためには、決算スケジュールの中に「還付請求書の準備」を組み込んでおきましょう。
税務調査への対応と失敗しないための予防策
還付請求は払いすぎた税金が帰ってくるだけの手続きですが、実は税務調査との関連性が指摘されます。
具体的にどういった点で関係し、また税務調査での指摘を避けるにはどうすればいいのでしょうか。
還付申告は「調査のきっかけ」になりやすい?
法人税の還付請求は税務署の目に留まりやすいことは、実は税務の現場ではあり得る話と捉えられます。
還付を請求すること自体には問題性はないものの、還付申告した法人は「申告内容の確認」という形で税務調査の対象になる可能性があります。
これは税務署が還付の正当性を確認するためで、不正の抑止を目的としています。
ですので、正当に還付を請求し事前に必要な書類を準備すれば、税務調査が入っても慌てることはありません。
▶関連コラム:税務調査が不安な方へ│対象になる条件や経費の内容、今からできる対策も解説
よくある申告ミスと失敗事例
法人税の還付請求について、指摘されるケースが多いのは「書類不備」と「計算ミス」です。
こうした指摘を避けるために、以下のチェックリストを参考に事前に入念な確認を行いましょう。
- 青色申告書を前期・当期ともに提出しているか
- 資本金が1億円以下であることを確認したか
- 繰戻し還付の計算式(欠損金÷前期所得金額)を正確に使っているか
- 還付請求書の記載漏れ・数字の転記ミスがないか
- 「未収法人税等」の決算仕訳を忘れていないか
- 還付加算金を「雑収入」で処理しているか
- 提出期限内に申告書と還付請求書を同時提出できる準備があるか など

橋場先生
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まとめ
▶関連コラム:ココが違う!ARK税理士事務所と一般的な税理士事務所│5つの強み、サポートの実例を紹介
法人税の還付金は、正しい手続きを経ることでキャッシュが確実に手元に戻ってくる制度です。
特に中間納付額が過大であったケースや欠損金が生じている場合には数百万円単位で還付される可能性もあります。
改めて、本記事で紹介した還付成功のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 発生原因(中間納付過多・欠損・過誤納)を正確に把握する
- 計算式を正確に使い、金額を検証する
- 「未収法人税等」の仕訳を決算時に必ず計上する
- 還付加算金は「雑収入」で処理する
- 申告書の提出期限を守る
- 税務調査に備えた書類整理を日頃から行う
還付申告はキャッシュフロー改善に直結するメリットがある手続きですが、手続きの煩雑さや税務調査リスクへの不安があることも事実です。
こうした場合は、税理士など税務の専門家に方針を定めてもらうことをおすすめします。
適切な計算および論理構成を元に還付請求をすれば、万が一税務調査に当たっても指摘を受けることはありません。
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