【インボイス制度の経過措置とは?】計算方法や制度の概要について詳しく解説!

2023年10月にスタートしたインボイス制度から、まもなく3年が経過します。
制度開始当初から設けられていた経過措置について、「2026年で終了するの?」「2割特例が終わったらどうすればいい?」「インボイス未登録の取引先とは今後も取引できる?」と疑問を持っている事業者の方も多いのではないでしょうか。
2023年~2025年の制度導入直後を前提とした情報はすでに古くなっていますが、2026年8月現在、インボイス制度の経過措置がすべて終了したわけではありません。
2026年9月30日を一つの節目として、2割特例や免税事業者等からの仕入れに関する仕入税額控除の扱いが変わります。さらに、令和8年度税制改正により、2026年10月以降の新たな経過措置や、一定の個人事業者を対象とした「3割特例」も設けられています。
本記事では、2026年現在のインボイス制度の経過措置、2割特例終了後の対応、インボイス未登録事業者との取引、2027年以降の3割特例や簡易課税まで、中小企業・個人事業主が実務上確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
目次
インボイス制度の経過措置は2026年で終了する?
まず結論からいうと、2026年にインボイス制度の経過措置がすべて終了するわけではありません。
インボイス制度には複数の経過措置があり、それぞれ対象者や終了時期が異なります。
【2026年時点で押さえたい主な経過措置】
- 2割特例:2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象
- 免税事業者等からの仕入れ:2026年9月30日までは80%控除
- 2026年10月以降:70%→50%→30%と段階的に控除
- 3割特例:一定の個人事業者について2027年分・2028年分が対象
- 少額特例:一定規模以下の事業者について2029年9月30日まで
つまり、2023~2025年を中心として説明されていた「制度導入直後の経過措置」は次の段階へ移りますが、2026年10月以降も一定の負担軽減措置は残ります。
特に2026年は制度の切り替わりが集中するため、これまでと同じ処理をそのまま続けないよう注意しましょう。
(参考)国税庁 令和8年度税制改正特集
そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を正しく行うために、一定の記載事項を満たした「適格請求書(インボイス)」を利用する制度です。
一般課税で消費税を計算する場合、基本的には売上時に受け取った消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて納税額を計算します。
【消費税の基本的な考え方】
売上に係る消費税 - 仕入れ・経費に係る消費税 = 納付する消費税
この「仕入れ・経費に係る消費税」を控除することを仕入税額控除といいます。
インボイス制度では、一般課税により仕入税額控除を受ける場合、原則として帳簿と適格請求書等を保存する必要があります。
▶関連コラム:【2023年最新版】知らないと売上10%減少!?インボイス制度について税理士が徹底解説
課税事業者と免税事業者の違い
消費税では、事業者は大きく「課税事業者」と「免税事業者」に分けられます。
原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には消費税の納税義務が生じます。
一方、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合は原則として免税事業者となりますが、特定期間の課税売上高や給与等支払額、新設法人等に関するルールなどによって課税事業者になる場合もあります。
また、インボイス発行事業者として登録すると、売上高が1,000万円以下であっても原則として課税事業者となります。
そのため、「売上1,000万円以下なら必ず消費税を納めなくてよい」という理解は正確ではありません。
インボイス登録はすべての事業者に義務付けられているわけではない
インボイス発行事業者への登録自体は、すべての事業者に義務付けられているわけではありません。
たとえば、一般消費者との取引が中心で、取引先からインボイスの発行を求められることがほとんどない事業者の場合、登録しないという選択肢も考えられます。
一方で、法人や課税事業者とのBtoB取引が中心の場合には、取引先が仕入税額控除を受けるためにインボイスを求める可能性があります。
そのため、登録するかどうかは、
- 主な取引先が一般消費者か事業者か
- 取引先が課税事業者かどうか
- インボイス未登録の場合に取引条件へ影響があるか
- 登録した場合の消費税負担はいくらになるか
- 簡易課税や2割特例を利用できるか
などを確認したうえで判断する必要があります。

橋場先生
インボイス登録の判断は、「売上が1,000万円を超えているか」だけで決めるものではありません。
取引先との関係や、登録後の消費税負担、利用できる特例まで含めて比較することが重要です。
ARK税理士法人では、実際の売上・経費をもとに登録した場合と登録しない場合の税額をシミュレーションできますので、お気軽にご相談ください。
2割特例は2026年で終了?対象期間を確認
インボイス制度の開始によって免税事業者から課税事業者になった小規模事業者の負担を軽減するために設けられたのが「2割特例」です。
2割特例を利用すると、仕入れや経費にかかった消費税を一件ずつ計算しなくても、売上に係る消費税額の2割を納付税額とすることができます。
対象となるのは、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった方など、一定の要件を満たす事業者です。
2割特例は2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象
2割特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間に適用できます。
ここで注意したいのが、「2026年9月30日にすべての事業者が一斉に2割特例を使えなくなる」という意味ではない点です。
たとえば、国税庁では個人事業者の場合、2026年分の消費税申告も2割特例の適用対象として示しています。
また、3月決算法人の場合は、2027年3月期について2割特例を適用できるケースがあります。
【2割特例の終了についてのポイント】
- 対象期間の基準日は2026年9月30日
- 個人事業者は2026年分の申告で適用できる場合がある
- 法人は決算期によって最後に適用できる事業年度が異なる
- 自社の課税期間を確認して判断する必要がある
2割特例を利用した場合の計算例
具体例で確認してみましょう。
【売上に係る消費税額が500万円の場合】
2割特例
- 売上に係る消費税額:500万円
- 納付税額:500万円 × 20%
- 納付税額:100万円
一般課税では仕入れや経費に係る消費税額によって納税額が変わりますが、2割特例では売上税額をもとに比較的簡単に計算できます。
ただし、実際には簡易課税制度や一般課税の方が有利になる場合もあるため、「2割特例を使える=必ず2割特例が最も有利」とは限りません。
2026年10月から免税事業者等への仕入税額控除は80%から70%へ
インボイス制度の経過措置には、2割特例とは別に、インボイス発行事業者ではない免税事業者等から仕入れた場合の買い手側の経過措置があります。
2026年9月30日までは、一定の要件を満たせば、免税事業者等からの仕入れについて消費税相当額の80%を仕入税額控除できます。
以前は、2026年10月以降は50%へ引き下げられる予定でした。
しかし令和8年度税制改正によって見直され、2026年10月以降は70%控除へ変更されています。
| 期間 | 免税事業者等からの仕入れで控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 原則0% |
この見直しにより、旧制度で予定されていた「2026年10月からいきなり50%になる」というスケジュールではなくなっています。
2026年10月からは80%から70%への引下げとなる点を、経理担当者や経営者は押さえておきましょう。
(参考)国税庁 令和8年度税制改正特集
インボイス未登録事業者から110万円仕入れた場合を計算
インボイス未登録事業者との取引が買い手側にどの程度影響するのか、簡単な例で確認します。
税率10%の商品等を税込110万円で仕入れ、そのうち消費税相当額が10万円だったとします。
【2026年9月30日まで:80%控除】
- 消費税相当額:10万円
- 仕入税額控除:10万円 × 80% = 8万円
- 控除できない部分:2万円
【2026年10月以降:70%控除】
- 消費税相当額:10万円
- 仕入税額控除:10万円 × 70% = 7万円
- 控除できない部分:3万円
同じ取引金額でも、2026年10月以降は買い手が控除できる金額が1万円減ることになります。
取引金額が大きい、またはインボイス未登録事業者との取引件数が多い会社では、積み上げると消費税負担への影響が大きくなる可能性があります。
一つの未登録事業者からの仕入れが年間1億円を超える場合にも注意
令和8年度税制改正では、70%・50%・30%の経過措置について、適用できる取引金額にも見直しが入りました。
一つのインボイス未登録事業者からの課税仕入れの合計額が、その年または事業年度で税込1億円を超える場合、超えた部分については経過措置を利用できません。
この見直しは、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
通常の中小企業では該当しないケースも多いですが、特定の外注先や仕入先との取引額が大きい企業は注意しましょう。
インボイス登録をしない場合、2026年以降どうなる?
インボイス登録をしなかったからといって、直ちに取引が禁止されたり、事業を継続できなくなったりするわけではありません。
ただし、買い手が一般課税の課税事業者である場合、インボイス未登録の取引先からの仕入れについて控除できる消費税額は段階的に減少していきます。
そのため、BtoB取引が中心の免税事業者では、今後、取引先からインボイス登録状況について確認される可能性もあります。
【インボイス未登録の場合に確認したいこと】
- 主要取引先が一般課税か簡易課税か
- 取引先がインボイスを必要としているか
- 2026年10月以降の70%控除による影響
- 今後の取引条件に変更がないか
- 登録した場合に自社の消費税負担がいくらになるか
なお、簡易課税制度を利用している買い手は、実際の仕入税額ではなく「みなし仕入率」で税額を計算するため、一般課税の事業者とはインボイス未登録事業者との取引による影響が異なります。
取引先の状況まで含めて判断することが大切です。

橋場先生
インボイス未登録だから「必ず売上が下がる」、登録したから「必ず得をする」と単純に判断することはできません。
重要なのは、取引先側の税務処理と、自社が登録した場合の消費税負担を両方計算することです。
大切な取引先との契約条件を変更する前に、一度数字で比較してみることをおすすめします。
2割特例終了後はどうする?2026年以降の実務対応
2割特例を利用している事業者は、特例終了後も課税事業者として消費税の申告・納税を続ける場合、次の計算方法を検討することになります。
- 一般課税
- 簡易課税制度
- 一定の個人事業者は2027年・2028年の3割特例
それぞれ税額や事務負担が異なるため、2割特例終了直前になってからではなく、2026年中に比較しておくことをおすすめします。
個人事業者は2027年・2028年の「3割特例」を確認
令和8年度税制改正により、インボイス発行事業者になったことで免税事業者から課税事業者となった一定の個人事業者について、新たに「3割特例」が設けられました。
3割特例では、2027年分・2028年分の消費税申告について、一定の要件を満たせば売上に係る消費税額の3割を納付税額とすることができます。
【3割特例の主なポイント】
- 対象は一定の個人事業者
- 2027年分・2028年分が対象
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの要件がある
- インボイス発行事業者であることが必要
- 法人は3割特例を利用できない
たとえば、売上に係る消費税額が100万円の場合、3割特例を利用すると、納付税額は原則30万円となります。
ただし、業種や仕入れ状況によっては簡易課税の方が有利になる場合もあります。
(参考)国税庁 令和8年度税制改正特集
法人は一般課税か簡易課税を検討
3割特例は個人事業者向けの制度であるため、法人は2割特例終了後、原則として一般課税または簡易課税などにより申告することになります。
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が一定の届出を行うことで利用できる制度です。
実際の仕入れや経費に係る消費税額を積み上げる代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納付税額を計算します。
| 事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業等 | 80% |
| 第3種 | 製造業・建設業等 | 70% |
| 第4種 | その他 | 60% |
| 第5種 | サービス業等 | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
簡易課税を利用すると有利になるかどうかは、業種や実際の経費率によって異なります。
また、簡易課税制度は一度選択すると原則として2年間継続して適用する必要があるため、事前のシミュレーションが重要です。
2割特例終了後は簡易課税への移行期限にも特例あり
通常、簡易課税制度を利用するには、原則として適用を受けようとする課税期間が始まる前までに届出が必要です。
しかし令和8年度税制改正では、2割特例や3割特例から簡易課税へ移行しやすくする措置が設けられています。
一定の場合には、2割特例・3割特例を利用した翌課税期間について、その課税期間の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を利用できます。
2割特例終了後にどの計算方法を選ぶか迷っている事業者にとって重要な改正です。
2026年も「少額特例」は利用できる
インボイス制度には、事務負担を軽減するための「少額特例」もあります。
一定規模以下の事業者については、税込1万円未満の課税仕入れであれば、インボイスを保存していなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存することで仕入税額控除を利用できます。
【少額特例のポイント】
- 税込1万円未満の課税仕入れが対象
- 基準期間の課税売上高1億円以下、または特定期間の課税売上高5,000万円以下などの事業者が対象
- 一定事項を記載した帳簿の保存が必要
- 2029年9月30日までの課税仕入れが対象
なお、1万円未満かどうかは一商品ごとではなく、原則として一回の取引単位で判定します。
たとえば5,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入し、取引合計が12,000円となった場合には少額特例の対象とはなりません。
2026年中に中小企業・個人事業主が確認しておきたいこと
インボイス制度は2026年に大きな切り替え時期を迎えます。
特に以下については、早めに確認しておきましょう。
【2026年のインボイス対応チェックリスト】
- 自社が2割特例をいつまで利用できるか
- 2割特例終了後の納税額はいくらになるか
- 一般課税と簡易課税のどちらが有利か
- 個人事業主の場合は3割特例を利用できるか
- インボイス未登録の取引先が何社あるか
- 未登録事業者からの年間仕入金額はいくらか
- 2026年10月以降の70%控除を会計ソフトへ反映できるか
- 取引先マスターの登録番号が最新か
- 税込1万円未満の取引で少額特例を利用できるか
- 請求書・領収書・帳簿の保存方法に問題がないか
特に一般課税を利用している企業では、2026年10月をまたいで取引処理を行う際、免税事業者等からの仕入れについて80%と70%の区分を正しく処理する必要があります。
会計ソフトや経理担当者の運用も含めて、事前に確認しておきましょう。

橋場先生
2026年のインボイス対応では、「2割特例が終わる」という一点だけを見るのではなく、その後どの計算方法を選ぶかまで考えておくことが重要です。
また、買い手側では2026年10月から免税事業者等との取引における控除割合も変わります。
ARK税理士法人では、一般課税・簡易課税・各種特例を比較し、実際の納税額までシミュレーションしたうえで対応方法をご提案します。
まとめ|2026年はインボイス制度の「次の段階」への移行時期
2023年10月に始まったインボイス制度は、2026年に一つの大きな節目を迎えます。
2023年~2025年を前提としていた制度導入直後の情報だけでは、現在の制度を正しく判断できません。
2026年時点で特に押さえておきたいのは、以下のポイントです。
- 2割特例は2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象
- 個人事業者は2026年分で2割特例を利用できる場合がある
- 2026年10月から免税事業者等からの仕入税額控除は80%から70%へ
- 2028年10月から50%、2030年10月から30%へ段階的に縮小
- 一定の個人事業者には2027年・2028年の3割特例を創設
- 法人は2割特例終了後の一般課税・簡易課税を検討
- 一定規模以下の事業者の少額特例は2029年9月まで継続
特に2割特例を利用している事業者は、特例終了後に消費税負担がどの程度増えるのかを、2026年中に確認しておくことが重要です。
また、インボイス未登録の仕入先が多い企業では、2026年10月からの70%控除への変更が納税額にどの程度影響するのか確認しておきましょう。
インボイス制度への対応は、登録の有無だけではなく、一般課税・簡易課税・2割特例・3割特例、取引先との関係まで含めて判断する必要があります。
自社にとってどの方法が適しているのか判断に迷う場合は、インボイス制度や消費税に精通したARK税理士法人へぜひご相談ください。
現在の売上や経費、業種、取引先の状況を踏まえて、納税額のシミュレーションから今後の実務対応までサポートいたします。
最終更新:2026年8月
本記事は、国税庁・財務省等が公表している2026年8月時点の法令・公表資料をもとに作成しています。制度の適用にあたっては、事業者ごとの課税期間や適用要件によって取り扱いが異なる場合があります。
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