【個人事業主の厚生年金の代わり】小規模企業共済、4つのメリット・2つのデメリットを解説
「個人事業主の厚生年金の代わりとして、小規模企業共済を使いたい」
本記事は、こうした個人事業主に向けて、小規模企業共済のメリット・デメリットについて解説しています。
小規模企業共済以外の国民年金基金、iDeCoといった、年金の代わりとして利用できる他の制度にも触れていますので、個人事業主の老後について考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
個人事業主の厚生年金の代わりは「3つ」
個人事業主が厚生年金の代わりとして利用できる制度は、主に次の3つです。
- 国民年金基金
- iDeCo
- 小規模企業共済
いずれも毎月一定の金額(掛金)を支払い、将来受け取る年金を積み立てていく制度です。
どの制度も節税面でのメリットがある点が特徴です。
共通のメリット(1)支払った掛金で所得控除 = 節税
3つの制度とも、支払った掛金全額が所得控除となります。
毎年支払う「所得税」「住民税」といった税金は、1年間の収入から経費を差し引いた「所得」に税率をかけて算定しますが、所得控除は所得を減らす効果がありますので、結果として支払う税金を抑えられます。
所得控除の計算例
【年間所得500万円の場合】
所得500万円の場合
▶所得税率20%
▶所得控除額42万7,500円 より
500万円✕20% – 42万7,500円 = 所得税57万2,500円
【年間50万円の掛金がある場合】
所得500万円-50万円≒450万円の場合
▶所得税率20%
▶所得控除額42万7,500円 より
450万円✕20% – 42万7,500円 = 所得税47万2,500円
57万2,500円 – 47万2,500円 = 10万円(掛金での所得控除の節税効果)
共通のメリット(2)受取のとき公的年金等控除に = 節税
3つの制度は、積み立てた掛金を年金のように分割して受け取ることが可能です。
このとき、公的年金控除という所得控除を利用できます。
公的年金控除の計算例
【公的年金等の収入が200万円の場合】
所得200万円の場合
▶所得税率10%
▶所得控除額9万7,500円 より
200万円✕10% – 9万7,500円 = 所得税10万2,500円
【年間110万円の控除がある場合】
所得200万円 – 110万円 ≒ 90万円の場合
▶所得税率5%
▶所得控除額0円 より
90万円✕5% – 0円 = 所得税4万5,000円
10万2,500円 – 4万5,000円 = 5万7,500円(公的年金控除を利用した場合の節税効果)
共通のメリット(3)一括受取で退職所得控除に = 節税
小規模企業共済とiDeCoでは、積み立てた掛金を分割して受け取ることのほか、一括して受け取ることも可能です。
このときも、退職所得控除を利用して節税できます。
退職所得控除の計算例
【退職所得控除の計算例】
受取額が2,000万円の場合
▶所得税率40%
▶所得控除額279万6000円 より
2,000万円✕40% – 279万6,000円 = 520万4,000円
【退職所得控除がある場合(例:勤続年数20年)】
勤続年数20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円✕勤続年数」
退職所得控除額:40万円✕20年 = 800万円
退職所得金額は控除後の金額に1/2を掛けるため、課税退職所得金額は以下のとおり。
(2,000万円 – 800万円)✕1/2≒600万円の場合
▶所得税率20%
▶所得控除額42万7,500円 より
600万円✕20% – 42万7,500円 = 77万2,500円
520万4,000円 – 77万2,500円=443万1,500円(退職所得控除を利用した場合の節税効果)
橋場先生
詳しい計算については、ARK税理士法人まで、お気軽にご相談ください。
ズバリ、やるべきは『小規模企業共済』
個人事業主が選択できる、厚生年金の代わりとなる制度を3つ紹介しましたが、中でも利用するメリットが大きくなる制度は「小規模企業共済」です。
どうして小規模企業共済がおすすめなのか、またデメリットと対策についても解説します。
「小規模企業共済」4つのメリット
小規模企業共済には、次の4つのメリットがあります。
- 掛金での節税効果が高い
- 退職金の代わりになる
- 元本割れしない
- 貸付制度がある
掛金での節税効果が高い
1つ目のメリットは、掛金による節税効果が高い(上限金額が高い)ことです。
3つの制度の掛金の上限は以下のとおりです。
- 小規模企業共済:7万円
- iDeCo:6.8万円
- 国民年金基金:6.8万円
このように、小規模企業共済は掛金が最も高く、結果として所得控除の金額が大きくなり節税メリットを最大化できます。
退職金の代わりになる
2つ目のメリットは、退職金の代わりになることです。
小規模企業共済とiDeCoは一括受取を選択すれば、一時金として受け取ることができ退職所得控除を利用できます。
加えて、iDeCoは原則として60歳にならなければ受け取れませんが、小規模企業共済なら次の複数のタイミングで受け取れますので柔軟性が高くなります。
- 廃業時
- 法人成りのとき
- 配偶者や子への事業譲渡のとき
元本割れしない
3つ目のメリットは、元本割れしないことです。
iDeCoは資産を運用する性質から、手数料や運用状況によっては元本割れを起こすリスクがあります。
一方で小規模企業共済には元本割れのリスクはなく、一定期間積み立てると受け取れる金額は確実に増えることとなります。
貸付制度がある
4つ目のメリットは、貸付制度があることです。
他の2つの制度とは異なり、小規模企業共済には貸付制度があります。
無担保無保証人で掛金の7~8割の金額を借り入れられ、さらに利率は一般枠で1.5%、特別枠で0.9%と、銀行や公庫で借り入れるより低くなっています。
「小規模企業共済」2つのデメリットと対策
一方で、小規模企業共済にはデメリットもあります。
把握して受け取りのときの後悔を避けましょう。
- 運用で増えた金額に課税される
- 年金として受け取れる時期が遅い
運用で増えた金額に課税される
1つ目のデメリットは、資産運用で増えた金額に対して課税されることです。
iDeCoでは運用で増えた利益は非課税ですので、運用益が多く出た場合には、iDeCoの方が結果として多くのお金を受け取れる可能性があります。
年金として受け取れる時期が遅い
2つ目のデメリットは、年金として受け取る時期がiDeCoより遅いことです。
iDeCoは60歳から年金として受け取れる一方で、小規模企業共済は受け取り開始年齢が65歳からとなっています。
橋場先生
本当に最適な制度は年齢や収支状況などでも変わりますので、オーダーメイドの回答を受けたい方は、ARK税理士法人までご相談ください!
まとめ│始めるなら『小規模企業共済』
個人事業主が厚生年金の代わりとして利用できる制度には、主には次の3つがあります。
- 国民年金基金
- iDeCo
- 小規模企業共済
類似する制度の中で、ズバリおすすめの制度を挙げるなら小規模企業共済です。
節税効果が高いほか、他の制度より受け取りタイミングを選びやすい点や元本割れを避けられる点、貸付制度がある点など利用する上でのメリットが豊富にあります。
ただし、年齢や事業の経営状況などによっておすすめの選択肢が変わる可能性もありますので、より詳しいアドバイスを求めている方はARK税理士法人まで、お気軽にご相談ください。