年金額を増やす方法がある!?『追納』のメリットについて、税理士が詳しく解説

「将来受け取れる年金額が少ないのでは…?」
少子高齢化が進み、現役世代が支える高齢者の数が年々増える中、こうした悩みを抱える方は多いものです。
将来、年金制度の見直しや支給額の減少も懸念される中、年金額への不安を抱くことは当然です。
こうした状況下で注目されているのは、国民年金の「追納」制度です。
本記事では、そもそも追納とはどういった制度なのか、また制度を利用するメリット・デメリットのほか、具体的な金額を含めたシミュレーションもお伝えしますので、老後の年金について不安をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
目次
年金の「追納」とは?仕組みを確認
そもそも「追納」とは、どういった仕組みなのでしょうか。
はじめに日本の年金制度の基礎的な部分からお伝えします。
まずは確認したい「国民年金」と「厚生年金」
「年金」とは、現役世代が保険料を納めることで、高齢者の暮らしを支える制度です。
本制度は、全ての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが国民年金に加えて加入する「厚生年金」に分かれます。
国民年金のみ加入している方(主に自営業の方)は、厚生年金と比べると受給できる金額が低くなりがちですので、「老後に資金が不足するのでは」と不安に感じるケースは少なくありません。
不足分を補い、年金額を増やす方法のひとつが「追納」です。
追納:国民年金を後払いできる制度
追納とは、過去に経済的な理由や学生生活といった理由で国民年金の納付が免除、猶予されていた分を後から支払える制度です。
免除や猶予の状態ですと上の図のとおり、将来の年金受給額が減ってしまいます。
追納することで、免除・猶予期間がないものして扱われ、満額に近い年金を受け取ることができます。
追納できるケースを確認
追納ができるのは以下のケースのように、国から正式に「納付が難しい」と認められていた期間に限られます。
- 学生納付特例を利用していたとき
- 所得が少なく、納付猶予や免除を受けていたとき
- 失業などにより一時的に収入が途絶えたとき
これらの期間がある場合は、追納することで将来の年金額を回復することが可能です。

橋場先生
年金の追納は将来の安心につながる一方で、制度の理解や資金計画が欠かせません。
不安や迷いがある方は、専門家に相談することで最適な判断ができます。
ARK税理士法人では年金や税務に関するご相談をわかりやすくサポートしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
年金を追納する「3つのメリット」
紹介した年金の追納制度、利用することで以下3つのメリットがあります。
- 将来受け取れる年金額を増やせる
- 生涯で見ると「支払った額以上に得する」
- 追納額は社会保険料控除の対象になる
「追納」は免除や猶予された期間も「納付済み」として扱われるため、将来の年金額を増やすことができます。
その効果は年金受給が始まってから一生涯続くため、支払った追納額を上回る形で差が広がるケースが多い点も特徴です。
さらに、支払った追納額は社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の軽減につながり、実質的な負担を抑えながら制度を利用できる点も大きな魅力です。
▶関連コラム:【所得税の節税は『所得控除』から】今日から節税に使える「所得控除12選」をご紹介
シミュレーションで確認!追納した場合に得する金額
「追納は本当にお得なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
制度の仕組みを理解しても、実際の数字で確認しなければイメージが湧きにくいものです。
そこで、大学時代に国民年金を免除されたケースを例に、追納をした場合としなかった場合でどれくらいの差が出るのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。
【大学4年間、学生納付特例を受けた場合と受けなかった場合】
- 原則:年金は40年間(480か月)全納で満額(例:月額68,000円)受給
- 4年間(48か月)免除:438か月だけ納付で減額(例:月額62,050円)受給
▶毎月5,950円の減額が一生涯継続
【年間、または20年の差】
- 年間:5,950円×12か月=71,400円 / 年
- 20年(60~80歳):71,400円×20年=142万8,000円
【追納した場合の費用】
- 大学4年分の追納額:約73万円
追納の負担は大きいように思えますが、10年で元が取れ、以降は得をし続けますので、追納は「長生きするほど得する仕組み」と言えるでしょう。
※上記は仕組み理解のための概算です。実際の年金額や加算額は、年数・物価・賃金改定等で変動します。

橋場先生
年金の追納は長生きするほど大きな差となって返ってくる有効な制度ですが、実際に利用するには「いつ・いくら追納するべきか」を見極めることが大切です。
ARK税理士法人では、年金に加えて人生設計を含めたお金の相談を承っています。
お金の不安を抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
追納制度を利用する場合のデメリットや注意点
一方で、追納制度をを利用する場合には、次のデメリットおよび注意点がありますので確認しましょう。
- 追納できるのは10年以内の期間に限られる
- 3年を超えると追納額が加算される
- 手元資金の減少に要注意
追納の対象は免除から10年以内に限られているため、長期間放置すると利用できなくなってしまいます。
また、3年を超えた分については加算額が上乗せされるため、後になればなるほど負担が大きくなる仕組みです。
さらに、一括で追納する場合は数十万円単位の支出になることもあり、生活費や他の資金計画に影響を与える可能性があります。
こうした点を理解したうえで、余裕のある時期に計画的に利用することが大切です。
まとめ
年金の追納制度は、免除や猶予された期間をあとから納め直すことで、将来の年金額を増やせる仕組みです。
利用することで「年金額の底上げ」「生涯で見れば支払額以上のメリット」「節税効果」といった利点があります。
一方で、追納できるのは10年以内に限られ、3年を超えると加算額が生じるため、早めの検討が重要です。
老後資金に不安を抱える方にとって、追納は将来の安心を支える有効な選択肢のひとつです。
実際に検討する際は、ねんきんネットで追納可能額を確認し、資金計画とあわせて判断することをおすすめします。
年金や税務に関して不安がある方は、専門家に相談することでより確実な対応ができます。
ARK税理士法人では、年金制度や税務全般をわかりやすくサポートしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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