黒字でも資金が残らない理由とは?経常利益、会社に必要な預金額の目安も解説

「黒字なのに、通帳を見るといつも資金が残っていない」
こうした経験は、経営者や個人事業主の方が直面することの多い、共通の悩みです。
経常利益は黒字なのに預金残高は減っていく、こうした悩みに直面する方に向けて、本記事では経常利益の基礎についてお伝えした上で、お金が残らない理由や資金繰り安定の方法などについて解説します。
目次
経常利益とは?会社の収益力を示す基本的な指標
改めて「経常利益」とはどういった指標なのでしょうか。
経常利益のみ確認することのリスクと合わせてご紹介します。
経常利益:本業と営業外で得た、会社の利益
経常利益とは、本業で稼いだ「営業利益」に加えて、受取利息や配当金なども含めた、会社の総合的な収益力を表します。
固定資産の売却など、臨時的に発生した利益や損失を除く、通常の事業活動で発生した利益を示す点がポイントです。
経常利益だけを見ていると危ない理由
経常利益は企業の収益力を把握する上で重要な指標ですが、「経常利益が黒字だから安全」とは限りません。
実際には利益と現金の動きは一致しないことから、以下の例のように経常利益が黒字でも資金繰りが苦しくなるケースはあります。
- 売掛金の回収が遅れて現金が不足した
- 在庫や設備投資の購入で現金が減ってしまった
- 税金や社会保険料の支払いが重なってしまった など
こうした状況になると、利益が出ていても手元資金が不足する状況になります。

橋場先生
経営する上で、経常利益と現金の動き(キャッシュフロー)はセットで見る視点が欠かせず、経常利益だけでは事業の安全性を担保することはできません。
資金管理や税務について不安をお持ちの方は、税務に加えて資金繰りなどのサポートもできる、ARK税理士法人にご相談ください。
「黒字なのにお金が残らない」のはどうして?
より具体的に、「黒字なのにお金が残らない」といった状況に陥る原因を確認しましょう。
黒字倒産が起きる3つの要因(固定費、売掛金回収、税金)
黒字なのにお金が残らない状況が続くと、経常利益は黒字なのに倒産する「黒字倒産」を起こす可能性があります。
こうした事態が発生するのは、主に以下の状況です。
- 売掛金の回収が遅れている
- 固定費が高く、売上の減少で資金が不足する
- 税金や社会保険料の支払いが重なり手元資金が圧迫される など
利益は出ているのに資金が減る「ズレ」の正体
こうした黒字倒産の原因は、会計処理と現金の動きの「ズレ」によるものです。
会計上は売上を計上していても、現金が入金されるのは翌月、または翌々月といったケースも珍しくありません。
一方で、仕入れや外注費、人件費は入金より先に出ていくケースも多く、入金と出勤の差額を建て替える期間が生じます。
利益が黒字でも預金が減る場合は、こうした「入出金のズレ」が関係している可能性があります。
資金繰り悪化が経営に与えるリスク
資金繰りの悪化によって手元資金が不足すると、以下のとおり事業にも悪影響が生まれることとなります。
- 仕入れや外注費の支払いに遅れが出て信頼関係を損なう
- 人件費の支払いの遅れにより従業員が離職する
- 税金や社会保険料に対して延滞金が発生する
- 銀行の融資判断に悪影響が出る など
こうした状況が続くと、結果として黒字でも倒産するケースにつながってしまいます。

橋場先生
手元資金が不足すると不安な状況が続きますが、実はその不安はすぐに解消しなければいけません。
資金が足りない状態を放置すると、経営自体に悪影響を及ぼしてしまうからです。
専門家と一緒に冷静に状況を整理すれば、すぐに体制を整えられる可能性はあります。
経営への不安をお持ちの方は、ARK税理士法人まで、お気軽にご相談ください。
安全な経営に必要な「預金額」の考え方
ご紹介した手元資金の不足について、実は会社の預金を十分に蓄えることで対策は可能です。
具体的にいくらあればよいのか、また資金繰りを安定させるためにするべきことについても確認しましょう。
目安は「固定費×6か月分」
経営を安定させるうえで、確保しておきたい預金額が「固定費✕6か月」分の資金です。
売上が急減したり、売掛金の入金が遅れたりした場合でも、6か月分の固定費があれば、事業を継続しつつ改善策を打つ余裕が生まれます。
まずは「半年分の固定費」を基準に預金を用意しましょう。
業種別に必要なキャッシュの違い
なお、注意が必要な点は、必要な預金額は業種によって異なることです。
- 建設業、製造業など:仕入れや外注費の支払いが先、入金が1~3か月後
- 小売業、飲食業など:売上が即時現金化される
- コンサル業など:情報などを商品としているため固定費が少なめ
このように入金、出金サイクルは会社によって異なります。
自社の入出金サイクルを正確に把握し、何か月分の預金が適正なのか検討しましょう。
資金繰り安定のために今日からできること
記事の終わりに、より具体的に資金繰りを安定化させるために、今日から検討できる対策の例をご紹介します。
- 資金繰り表の作成で毎月の入出金を可視化する
- 税金の口座振替やクレジットカード利用で支払いを後ろ倒しにする
- 家賃やリース費用、通信費など固定費を見直す
- 売掛金回収の前倒し、前受金の利用などで入金までの期間を改善する
- 条件のよい融資や補助金の活用で、余裕のあるうちに資金を調達する
まとめ
経常利益は企業の収益力を判断する上で欠かせない指標ですが、必ずしも利益と現金の動きが一致する訳ではありません。
売掛金の遅れや高額な固定費、税金や社会保険料の支払いといったイベントが重なると、黒字でも資金が不足して、最悪の場合「黒字倒産」に至る可能性もあります。
資金が思うように残らないとき、収支のタイミングを見直すだけで資金繰りに余裕が生まれることがあります。
一方で、「どこから改善すればよいか分からない」という方も少なくありません。
資金繰りに対して不安をお抱えの方は、資金繰りの改善から税務上の戦略まで、経営者の不安に寄り添いサポートする、ARK税理士法人までお気軽にご相談ください。
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