『給与の前借りをさせてください』社員に相談されたら?会社側が知っておきたいルールを解説

「給与の前借りをさせてください」
このような相談を従業員から受けた場合、どのように対応しますか?
本記事では、そもそも「給与の前借り」とはどういった手続きなのか、法律や各種制度の位置づけを解説します。
もしも求められた場合、どのように処理するべきか、といった点についても解説しますので、前借りを求められた場合、求められるかもと不安に感じている場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも「給与の前借り」とは?前払いとの違いも整理
「給与の前借り」という言葉を聞くことはありますが、そもそもどういった制度なのでしょうか。
似た言葉である、前払いやファクタリング、社内貸付制度といった言葉と合わせて解説します。
給与の前借り:これから働く分を先にもらう
給与の前借りとは、まだ働いていない分の給与を先んじて支払う手続きを指します。
似た言葉に「給与の前払い」がありますが、こちらは労働済みの賃金を給与日前に支払う制度です。
給与のファクタリング、社内貸付制度との違い
さらに類似する言葉がありますので、合わせて確認しましょう。
- 給与のファクタリング:給与を「債権」とみなして第三者に買い取ってもらう方法
- 社内貸付制度:福利厚生の一環として、低金利または無利子で従業員に貸付をする制度
なお、給与のファクタリングは、本人や会社とは異なる第三者が関わる手続きで、一部では高額な手数料を取る悪質な業者もありますので注意が必要です。
▶関連コラム:【節税対策に福利厚生】確認したい10の制度│利用時の注意点もご紹介

橋場先生
給与の前借りは、会社にとっても従業員にとってもデリケートな問題です。
その後の関係にも響く問題ですので、取り扱いに不安がある場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
ここまで紹介した手続き、制度についてお悩みの方は、ARK税理士法人まで、お気軽にご相談ください。
給与の前借りは法律上問題ないのか
続いて気になるのは、給与の前借りは法律上問題ないのか、ということです。
労働基準法での取り扱いなど、法律に基づく解釈を確認しましょう。
給与の前借りは問題ないが応じる義務はない
結論としては、前借りする(させる)こと自体は違法ではありません。
一方で、会社には前借りに応じる義務はありません。
(参考)厚生労働省 従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。
むしろ前借りを認めることで、以下のとおり問題が生じる可能性がありますので注意しましょう。
- 従業員からの返済不能、遅れ
- 退職時の精算に関わるトラブル
- 他の従業員との不公平感
労働基準法の「非常時払い」は要確認
注意が必要な点は、労働基準法が定める「非常時払い」です。
- 出産
- 疾病
- 災害その他厚生労働省令で定める非常の場合
こうした場合に労働者から請求があった場合は、給与日前であっても、すでに実施した労働に対する賃金を支払わなければいけない旨が記載されています。
つまり、出産や病気、災害に関連して「前払い」を求められた場合、支払いに応じる義務があるということです。

橋場先生
前払い、前借りなど、労働者との賃金の適切な処理は、労働者のモチベーションアップや長期勤続にもつながる大事な要素です。
判断を誤ることに不安を感じている方は、労務関係にも対応している、ARK税理士法人までお気軽にご相談ください。
従業員から給与の前借りを申し込まれたら
記事の終わりに、従業員から前借りや貸付などの手続きを求められた場合、どのように対処をするべきかご紹介します。
就業規則、賃金規定の内容を確認する
はじめに行うことは、就業規則や賃金規定などで手続きについて触れられているか確認することです。
規定に定められていれば粛々と手続きを進められますが、規定がない場合は個別対応となり、従業員間でのトラブルに発展する恐れもあります。
前借りの理由を確認する
前借りの申請について、理由を確認することも大切です。
労働基準法に定められている「非常時払い」に該当する場合や、規定に合う場合は適切に給与を支払います。
一方で理由が不適切なものであれば適切に断り、トラブルの元となる前例を避けましょう。
認める場合は返済方法を決める
前借りを認める場合は、次の点について取り決めをしましょう。
- 返済スケジュール
- 退職時の精算方法
- 返済不能時の対応 など
借用書や同意書で書面化し、後々のトラブルを避けます。
認めない場合も、制度上対応が困難である点、公平性の観点から個別の支給は認められない旨などを丁寧に説明しましょう。
まとめ
先んじて給与を会社から受け取る「前借り」について、制度の内容や対応を解説しました。
改めて、給与の前借りは違法ではないものの、会社側には応じる義務はありません。
一方で労働をした上で給与日の到来前に、出産や病気、被災といった特定のイベントがあった際、給与を「前払い」することは法律で定められています。
こうした従業員とのトラブルになりやすい話題は、専門家への相談が悩みの解決への近道です。
給与の前借りを含めて、給与や労務管理に関するお悩みを抱えている方は、税務・労務両面から会社経営にコミットする、ARK税理士法人にご相談ください。
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